犬と猫のがん治療 リンパ球移植免疫療法
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犬と猫のがん(癌)治療
近年、動物の生活環境は改善され、病気の予防への関心も高く予防意識は浸透しており、特に犬・猫の寿命は格段に長くなりました。そのような背景のなか、犬・猫における死因は人間と同様、「がん」が上位を占めるようになっています。

◇ 「がん」は治るかもしれない

動物病院での定期健診へ通う頻度、環境飼育の変化により、動物に注意を払う頻度や一緒に過ごす時間が昔と比較し長くなっていることから、がんを早期発見するケースが増えています。がんの種類によってはがんが小さい内に外科手術で切除すれば完治が見込めますし、早期のがんは各種治療法への良好な反応が期待されます。
がんかもしれない、あるいはがんと言われたことで、諦めてしまっていませんか。がんは治せる、もしくはがんであっても、元気で過ごせる時間が増えることに期待してみませんか。

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◇ 早期発見の重要性

がんが治癒するポイントは、人間と同様、早期発見・早期治療です。自覚症状を示すことのできない動物にとっては、飼い主様ご自身または定期的な健康診断で早期のがんを見つけることが重要です。当院では、春と秋に血液検診を実施しています。こういった機会をご利用いただいたくのもよいでしょう。健康に過ごしている動物でも、特に7歳以上(大型犬では6歳以上)の動物では、年2回の血液・尿の定期健診と、年1〜2回の精密検査(超音波検査、レントゲン検査など)を行うことをお勧めいたします。

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◇ 「がん」かもしれない

<「できもの」≠「がん」>
身体に「できもの」がある…と、お気づきになられた場合、実際にはどのようなものなのかを調べる必要があります。できものは、腫瘍だけではなく炎症や過形成といった状態もありますので、鑑別が必要です。また、腫瘍と判った場合にも、それが良性なのか悪性なのか知る必要があります。 できものの外見のみでは、炎症なのか腫瘍なのか、良性か悪性かの判断は難しく、できもの本体の細胞もしくは組織の検査が必要です。

<診断の流れ>
1:全身の状態をチェック
動物の全身状態を診察します。できものがいつ頃からあるのか、動物が患部を気にしているかなど、身体一般検査をします。症状によっては、血液検査、尿検査、レントゲン検査、エコー検査などの基本検査も加えることが勧められます。

2:できものの検査
大きさや数、色、形、周囲組織との癒着の有無など、できものの基本的な部分を調べます。その後、細胞もしくは組織の検査に移ります。

細胞・組織診断
 
・針生検
・スタンプ生検
  できものに細い針または特殊な針を刺し、形成している細胞の形態を調べます(針生検)。表面に潰瘍がある場合は、スライドガラスを直接あてて表面の細胞を採取することもあります(スタンプ生検)が、スタンプ生検では腫瘍本体が採取されることは少ないです。 これにより、異形細胞(がん細胞)の有無を検出します。特徴的な腫瘍細胞や、典型的な炎症細胞であればその場で診断をつけることができますが、場合により病理診断医に提出します。細胞の由来や系統、悪性度の診断をします。針生検は細胞の採取にとどまりますので、細胞診断結果によっては組織生検が必要です。また、腫瘍組織が脂肪細胞に囲まれている場合もあります。細胞診断で「脂肪」とでても、その後の増大傾向や変化によっては、組織診断を行います。

・組織生検   局所麻酔または全身麻酔下で正常組織を含めて腫瘍を切除し、病理診断医に組織検査をしてもらいます。細胞の形態も含め、正常組織への浸潤、リンパ管内や血管内に腫瘍細胞が出現しているのかも知ることができます。転移の可能性まで言及することができ、切除法によっては完全切除されているのかの判定になります。小さい腫瘍では、診断を兼ねた治療となり得ます。

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◇ 「がん」と診断されたら

<がんの治療法>
がんと診断された場合、以下の治療法があります。動物の体調評価をした上で、治療法が選択されます。複数組み合わせることもあります。 どの治療法も、やはり早期発見・早期治療が最大の効果となります。

1:外科療法
限局した場所に単発で発生した腫瘍では、できるだけ早期に(小さいうちに)正常組織も含めて大きくとることで、腫瘍の治療法中、最大の治癒効果があります。しかし、既に大きくなってしまっているもの、発見の段階で転移が認められるような腫瘍に対しては、動物の苦痛を取り除くための緩和的手段としておこないます。

2:化学療法(抗がん剤療法)
抗がん剤を使用し、がん細胞を攻撃します。リンパ腫のように化学療法が第一選択となるがんもありますし、外科手術後の病理組織検査の悪性度により、顕微鏡レベルでがん細胞を攻撃するための補助的な治療法として選択されます。手術が不可能な場合、緩和的手段としておこなわれることもあります。

3:放射線療法
放射線照射によって縮小が見込まれるがんに対しおこないます。外科療法と同様、局所的な腫瘍に対しおこないます。当院には放射線照射器はありませんので、大学病院等の施設へ紹介させていただきます。

4:免疫療法
血液中の細胞を分離・培養することでがん細胞を攻撃してくれる細胞を増やし、また体内に戻します。
詳しくはリンパ球移植免疫療法をご覧ください。

5:支持療法
がんの進行が末期であり、癌治療をするには身体的に耐えられないような場合、認められる症状に対しておこなう治療です。

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◇ 「がん」との付き合い方

<寛解(かんかい)と治癒の違い>
がん治療の評価として使用される用語で、寛解という言葉があります。これは、がんの症状が、一時的あるいは継続的に軽減した状態または見かけ上消滅した状態をさしており、再発の危険性があるがん治療の評価として使われます。例えば、がん治療後に症状が消失し、検査の数値も正常を示す状態を完全寛解、がんが前回よりも50%以上小さくなった(完全に消滅していない)場合や検査の数値が正常になりきらない場合は部分完解といいます。寛解と治癒は似て非なるものです。初期のがんを外科手術で完全切除できた場合は、治癒が見込めますが、転移率の強いがんやリンパ腫などの場合には、初期の治療後に一見何もなくなったように見えることがありますが、検査に影響が出ない程度に小さくなっているだけで、顕微鏡レベルでは腫瘍細胞が存在し続けています。腫瘍の種類によっては、治癒ではなく完全寛解の状態をいかに維持するかが、治療の目標になります。

<がんの再発・再燃と転移>
治療後、寛解の期間を経て同じ種類のがんが再び症状を現す場合を、再発や再燃といい、原発巣(初めに腫瘍が出来た場所)から局所組織やリンパ節、または原発巣から遠い場所(肺、肝臓、脾臓など)にがんが発生することを転移といいます。再発や転移でできたがん病巣は、各種治療手段に対しての反応が初期治療時よりも非常に悪くなります。がん細胞自身の治療に対する抵抗力や、増殖力が強まっているためです。がん治療が一度終了しても、その後定期的に健診をおこない、できるだけ早期に再発や転移を発見します。再発・転移病巣がまだ小さい場合には、外科手術や化学療法、リンパ球活性化免疫療法などでがんを縮小させ、増大をとどめる可能性があります。転移や再発を遅らせるために、免疫増強サプリメントの使用や、がんの種類によってはある種の非ステロイド剤の内服を併用します。

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◇ 動物からのサイン

<がんの疼痛(痛み)と緩和ケア>
がんに侵されている場合、疼痛が伴うことがあります。がんの進行度に関係することもありますが、がんの種類や転移場所(骨や神経)、増大の速度が速く周辺組織が圧迫されるなど、がんによる痛みの原因は様々です。動物の場合、自分で痛みを伝えることができませんが、幾つかのサインが痛みと関係していることがあります。
・触られることに神経質になる
・震えている
・足を引きずる、拳上する、動きたがらない
・食欲が落ちる
・唸ったり鳴いたりしている

痛みが原因で生活の質が低下していると判断される場合は、内服や外用薬、状態によっては手術により痛みを取り除きます。

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◇ 担癌動物との過ごし方

最後になりますが、がんである、と宣告された場合のご家族のショックはいかばかりだろうと、本当に心が痛みます。しかし、現実を受け入れ、今後どのように過ごしていくのか、厳しい現実ですが考えなくてはいけません。 がんの種類によっても、また同じがんでも、動物達個々の生命力と申しますか、寿命は異なります。中央生存期間などのデータはありますが、一概に皆がそういうわけではありません。
がんの動物達と接している中、経過が比較的良好なケースに、動物の性格やご家族の明るさが影響するかもしれない、と感じる時があります。 医学的な話ではなくなってしまいますが、ずっと悲しんで動物と接するのではなく、事実を受け止め、今までと変わらず明るく接することは、過ごし方として重要かもしれません。
痛みや苦しさが伴うタイプのがんでは、ご家庭での看病もつらいものとなるかもしれませんが、軽減されるための内服処方や過ごし方のアドバイスなど、獣医師・看護師共にお役に立てればと思っております。いつでもご相談ください。

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◇ リンパ球移植免疫療法

当院では「リンパ球活性化免疫療法」によるがん(癌)治療を受けられます。

がん療法には、従来の大きな3本柱である外科療法・放射線療法・抗がん剤療法(化学療法)がありますが、近年注目を集めており、第4の柱となりうる治療法が「免疫療法」です。この方法は、動物自身の血液細胞を使用するので、従来の方法で認められる副作用による苦痛を伴わず、生活の質(quality of life; QOL)の改善を高める治療法として注目されています。動物においては、臨床の現場で研究・導入され始めてからまだ年月が浅い分野ですが、様々な効果の報告がなされています。

<治療の流れ>
@ 採血を行います。清潔に採血する必要があるため、採血部位の毛を刈る必要があります。
A 血液中のリンパ球(がんを攻撃してくれる細胞)を2週間程培養して増殖させます。
B 2週間後、増やした細胞を30分〜1時間かけて動物の体に点滴で戻します。

理想としては、2週間に1度を6回(12週)行います。
しかし、動物の状態、その他がん療法との併用状況、細胞の増え方など、お話合いの上で投与間隔や回数を決定します。


<期待できる効果>
@ 相乗効果
他のがん療法との併用による相乗効果が期待できます。
外科療法、化学療法、放射線療法、漢方療法などの様々な治療法との併用で効果を上げている症例があります。

A 再発・進行の遅延
がんの進行状態によっては、体が弱りきっていたりがんの転移が生じている場合があり、外科療法や放射線療法などの治療法の選択が困難な場合がありますが、免疫療法後に転移巣が縮小したり、活発さが戻るなどの効果が確認されています。

B QOL改善
がんが進行すると、痛みや貧血など辛い自覚症状が現れますが、免疫療法にはこのような苦痛を和らげる作用があります。体内にガンが残っていたとしても、通常の生活を送ることができるようになる場合もあります。食欲がなく体重の減少が認められる場合でも、治療後に食欲が戻り、体重が増加するような効果が期待できます。

C 副作用がほとんどない
自らのリンパ球を増殖して投与するため、拒絶反応など、副作用の心配がほとんどありません(まれに投与後に軽い発熱が認められる場合があります)。どのような段階のガンであっても、また、体の衰弱が激しくても、長期にわたって安心して治療を受けることができます。
詳しくは当院獣医師にお尋ねください。

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